この街の「自治体法」により、住民たちは好きなカップケーキのフレーバーに合わせた色の服を着るよう定められています…!
そんなイカれた街で、事業拡大を競うカップケーキ店主たちのなかのイチバンを目指すボードゲーム、『カップケーキエンパイア』です。
ざっくり遊び方と、私なりの見どころをご紹介します。
目次
どんなゲーム?
プレイヤーはカップケーキ屋の店主。
闇雲に販売をがんばるだけでなく、レシピの開発や新規出店、店舗の改善を適切に行って、目標とする業績に誰よりも早く到達することを目指します。
ゲームの概要
このゲームでは、みんなで共有する街ボードとは別に、プレイヤーごとの個人ボードを扱います。
街ボードには、住民が並んでいます。
住民はカラフルなミープル駒。着ている服が、好みのカップケーキの好みを表しています。
街の周囲では、各プレイヤーの「業績」を管理します。業績はいわゆる勝利点。誰かが最初に1周したら、ゲームが終わります。
ゲームが進むにつれて加速度的に獲得できる点数が増えていくので、ゲームの終わりは意外と早くくる印象。
個人ボードでは、各プレイヤーが自分の店の状況を管理します。
選べるアクションごとに従業員を並べ、改善チップを配置します。
手番にやること
プレイヤーの手番には、①~⑤のアクションからひとつを選んで行います。
①カップケーキのベースの開発をする。
②トッピングの開発をする。
③カップケーキスタンドを出店する。
④カップケーキを販売する。
⑤お店を改善する。
①と②はお店の「生産力」を高める手段、そして③と④は「売上」を伸ばす手段です。
生産力も売上も、より多くの業績を得るために欠かせません。
⑤を選んでも得点こそすぐには伸びませんが、従業員を増やしたり追加のアクションを行えるようになるので、ゲームをより優位に運ぶためにとても有効です。
従業員の数とアクションの強さ
手番に行えるアクションの強さは、個人ボードでその作業に割り当てられている「従業員」の状況で変わります。
従業員とは、サイコロのこと。
個人ボードにはアクションごとに対応する色が示されており、アクションの色と一致するサイコロが割り当てられている場合には、そのサイコロは「専門家」という扱いになります。
基本的には従業員の数に応じて、到達しているレベルまでの強さのアクションを1回行えます。もしそのアクションの専門家が含まれていれば、専門家ひとつごとに、到達しているレベルよりもさらに上のアクションも選ぶことができます。
アクションの強さで何が変わるか?
例えば②のアクションでトッピングを開発するときを例に挙げてみましょう。
レベル1のアクションでは、単一の効果しか持たない「シングルフレーバー」のトッピングしか選べません。しかしレベル2からは複数のお客さんの好みに対応できるミックスフレーバーのレシピも選んで獲得できるようになります。
レベル3ともなると、シングルとミックスのレシピをひとつずつ、合わせて2つ獲得できます。一度に2手番分の成果が得られるといえば、かなり強力だということがおわかりいただけるでしょうか。
なお、ピンク色のサイコロはワイルド専門家となっています。どのアクションに配置してもレベルをひとつ押し上げてくれます。つよい。
ちなみにこのゲームで使われるサイコロは通常のサイコロですが、出目に対応したアクションの割当は①~⑤までしかありません。
じゃあ振り直したときに出目が⑥になったサイコロはどうなるかというと、休憩所に行ってしまいます。
休憩所は直接アクションに割り当てられないものの、決してハズレの出目ではありません。⑥が出るだけで、出目の調整や改善チップと交換できる名案チップがもらえますし、名案チップや業績を消費して好きなアクションに割り当てる従業員として扱えるのです。
休憩所の出目が出ない展開はむしろ、苦しい戦いになると思います。テーマと絡む面白いアイデアですね。
レシピタイルを手に入れろ
このゲームの「レシピ」はタイルになっていて、「ベース」と「トッピング」のそれぞれのパーツを組み合わせることで、ひとつのレシピが完成します。
レシピは、自分の手番中ならいつでも好きなときに組み合わせて完成させられますが、完成したレシピを再びバラバラにして組み替えることはできません。特に用途が限られているシングルフレーバーのレシピを決めるときはよく考えましょう。
ゲームの終わり
アクションを行ったら、生産力と売上のうち低い方の値に等しい業績を獲得します。そのあと使用したアクションのサイコロを振り直し、出た目の作業に割り当てたら、手番おわり。
街の様子を見て、住人の好みを確かめてほしいレシピを開発したり、新たな地区に出店してはカップケーキを販売したり、合間に追加の従業員を雇ったり。
手番を繰り返すことで、自分のお店の生産力を高め、売上を伸ばします。
誰かが累計70以上の業績を獲得したら、そのラウンドでゲームが終わります。
その時点で最もたくさんの業績を得ていた人が、この街のエンパイアです!!
たのしいね、遊んだ感想!
見た目のよい、やりくりダイスゲームです。
手番の流れや得点のしくみなどそれなりにルール量はありますが、小一時間で十分決着がつくような仕上がりで、よくまとまっていると思いました。
このゲームで私が感じた見どころは、大きく2つあります。
おすすめポイント①
ひとつめは、どう言い訳したってハッピーすぎるそのビジュアルです。
コンポーネントがかわいいね!
特にカップケーキのパーツを組み合わせてレシピにするギミックは、準備の段階からゲームを囲むみんなをハッピーにさせてくれること間違いなしです。ミープルが服を着ているのもいい。
より好みなのは、カラフルなミープルにもダイスにも、きちんとゲーム的な意味があるということです。
惜しむらくは、ハッピーすぎる見た目から想像するような、気軽でポップなパーティ系のゲームではないということ。
小一時間で終わるゲーム内容ではありますが、アクションが5種類もあり、手番ごとの手順も複数あるので、最初にルールを説明するときもちょっと気合がいりますし、プレイ中も常に気にしておくようなことがそれなりにあります。
街を見ながら獲得すべきレシピを考えたり、目先の手番の強さと獲得できる業績の量と、どっちを取るか天秤に掛けたり。悩みどころが多いです。
幸い、前の手番にサイコロを振り終わっているので、他の人に手番の間にシンキングタイムをたっぷり取ることができる親切なゲームデザインになっています。
遊ぶハードルはそんなに高くないと思いますので、ご安心ください。
おすすめポイント②
もうひとつの見どころは、「業績」の獲得の仕方です。
業績は、いわゆる「勝利点」。
勝利点のほとんどを、定期収入のように毎手番ごとに自動的に得ることになる作品はあまり見かけないように思いました。
個人ボードには、「生産力」と「売上」という2つのパラメーターがあり、手番に行ったアクションに応じて、すこしずつ上昇していきます。
この2つのうち低い方の数値が、手番の終わりに業績として加点される、という仕組みです。
得点効率が良さそうなのは、生産力と売上の差が開かないように交互にあげていくことですよね。
でも多くの場面でプレイヤーは「生産力をあげたら生産力をあげる」、あるいは「売上をあげたら売上を上げる」というふうに、次の手番のアクションをつなげたくなるようにできています。
あちらを立てればこちらが立たず…まあボードゲームって、そういうものですけどね。
定期収入の他に、遠方の住民を顧客にしたり、ゲームごとに提示される目標タイルを達成したりすることでも、業績は獲得できます。
ただし目標タイルは、意識してプレイしないと達成できないものが多いです。お店の経営を多少犠牲にしてまで取るべきか?
これまた悩みどころだったりします。
インタラクション?
プレイヤー間の攻撃的な関わりは、控えめな印象です。
とはいえプレイヤー同士で影響を与え合う要素は多く、レシピは有限なので早いもの勝ちですし、お客さんは最初に販売したお店のものになるからこれも早いもの勝ち。追加で雇える従業員も有限、出店スペースも限られているので、他の人に先を越される可能性を意識しないわけには行きません。
それでも、奪われたからといってお先真っ暗になるわけではなく、多少のロスはそこまで重要ではありません。そもそも狙いがかぶらなければノーダメージで済みません。
影響が大きそうな奪い合いは「改善チップ」で、これは手番のアクションを永続的に強化するものなのですが、やはり数が限られています。自分の重視したいチップが手に入るととても捗ります。
逆に言うと、欲しいチップを人に奪われてしまうと、今回のゲームでの短い将来設計に大変な痛手を負うことになるでしょう。
目的タイルとの兼ね合いもあるゲームではさらに顕著かもしれません。
とはいえやはり、それだけが勝敗の決め手になるほどではなさそうな程度のゲームバランスです。
ダイスゲーム?
見た目通り、サイコロを何度もたくさん振るゲームです。だから本作はダイスゲームと読んで間違いはないと思います。けれども実際に遊んでいると、なんだか「ダイスゲーム」という感じがあまりしません。
というのも、ダイスゲームといえばある程度、プレイヤーの意志ではどうにもならない出目の運に一喜一憂するようなところがあるものです。でもこのゲームではあまり、そういった気分にならないからです。
理由はおそらく、毎手番に「業績」やプレイ中にときどき手に入る「名案チップ」を支払うことで、出目の結果である従業員を移動できるせいです。
もちろん資源をやりくりして出目を操作するような仕組みもまた、ダイスゲームにありふれているものです。ただしこのカップケーキエンパイアでは、その操作を手番に1回ずつしか行えないという、行動回数の制約が強く影響します。
先に使って、今回の手番をより有意義に行うか。次回の手を整えるため、あとに使えるよう温存しておくか。
どちらを取るか、何度も苦慮することでしょう。
運よりも、毎手番の従業員の操作に対する判断の積み重ねに唸るゲームなのです。
勝利点を引き換えにしよう!
前借りとか借金みたいなお話ならなんぼでも聴きたいって方、まれによくいらっしゃいますね。
最後は一部の偏った好みのボードゲームファンの方のために、上の画像をお見せしておきましょう。
重ねられたディスクは、このゲームのスタート時点での各プレイヤーの業績を表しています。
全員、業績の値は「5」。
最初から勝利点を持っているということは。
このゲームでは、点数が下がる状況があるということを意味します。
それはいつ?
カップケーキエンパイアで点数が下がるのは、「出目の操作」をするために業績を支払うときです。
つまりこのゲーム、まだまだゲーム展開が定まらない一番最初の手番から、勝利点を失ってでもどのような狙いを定めていくかという判断を迫られるのです!!
見た目のかわいさからは想像もつかない圧を掛けられていますよね。
圧、お好きですか?
どちらかといえば私は好きなほうです。
まあこのような圧は、初回プレイではそんなに気にならないタイプの圧だと思いますから、どうぞ身構えずに楽しんでいただければと存じます。
まとめ
見た目はかわいい、でもしっかりした中量級をお探しの方には、うってつけのゲームだと思います。
数回遊んだ限りですが、ゲームの最後には、点差が大きく開きがちでした。
定期収入的に進んでいく点数の幅が、終盤になるにつれ大きくなるということに起因すると思われます。
なのでお店の改善のような下準備にずっと取り組みたくもなりますが、どのあたりでそれを切り上げて、限られた手番でなるべく点数を伸ばす方向へ転向していくか。
ラストスパートの見極めまでも問われるゲームだなと思いました。
以上、このゲームを遊ぶときの参考になれば幸いです。
『カップケーキ・エンパイア / Cupcake Empire』
2-4人用 / 約60分 / 10歳以上
Designer: Al Leduc, Yves Tourigny
Artist: Amanda Duarte, David Prieto
Publicher: アークライト (日本語版 2020)
Cupcake Empire | Board Game | BoardGameGeek
この記事を書いたのは、なかよし☺(東京なかよしデザイン)
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