香川県発の兄弟ボドゲ製作ユニット、STUDIO U × F さんの初出展三部作のうちのひとつである『大熊山』を遊ぶ機会に恵まれました。
なお同三部作の中でファッションをテーマにした『トレンド』は昨年の「たのしいねアワード」に選ばれています。
ぜんぜんタイプ違いそうなゲームだけど、なんだか期待しちゃうな~!
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どんなゲーム?
プレイヤーは山男になって、キノコや木の実、山菜などを求めて山に入ります。
ただし山は滑落の危険とも隣り合わせ。いたずらな猿や、おそろしい熊も現れます。
おばあさんの助言や甘言にもよく気を配って行こうね!
パッと見では、ボードがあり、コマがあり、サイコロを振って進めていくタイプのオーソドックスなすごろくに見えます。
その想像に違わず基本的には、止まったマスに応じたイベントを繰り返して遊びます。
しかし、この単純そうに見えるすごろくには、以下のような特徴があります。
・サイコロは1~3しか出ない。4~6の目は出ないので、3歩より先のことは考えなくて良い。
・コマはみんなでひとつ。自分の手番に止まったマスのみ自分に影響する。
・ルートは自由。ただし岐路を通る前にはサイコロを振る前に進路を宣言しておく。次の岐路に至るまで、他の人が決めた進路には従わなければならない。
・ゴールは自由。好きな場所から入山して、好きな場所へ下山できればよい。
・ゴールへの速さではなく得点を競う。所定ラウンド数の入山を繰り返し、そのたびに持ち帰った山の幸を売ったお金が得点になる。
・途中脱落がある。山の幸カードに紛れ込んでいるクマやマップに現れるクマを複数引き当てたり、滑落マスに止まってしまった場合、手持ちの山の幸を失いラウンドから脱落する。
・おばあさんがいる。プレイヤーは交代でおばあさんになり、すごろくには参加せずに熊よけのイヌを有償でレンタルしたり、有償で中途下山を許可したりできる。
これらの仕掛けによっておおくまやまは、サイコロで運を試すだけのすごろくではなくなります。
プレイヤーたちは、得点を伸ばすような挑戦的な進路選択、時には他のプレイヤーの脱落リスクを高める攻撃的な立ち回り、そして自分をより優位に導くような交渉や駆け引きを繰り返すのです…!
たのしいね、遊んだ感想!
おおくまやま、よいすごろくでした!
クマがね、出るんですよ。
そりゃ大熊山ですからね、出るんでしょう。でもそれがむちゃくちゃ怖い。
マップ上で見えるクマ(赤と黒のマス)を、1~3でしか出せないサイコロで越えていかなきゃいけないのも怖いんですけど。
得点を集めるとき(透明なマス)に潜んでいるクマはもっと怖い。
大きなクマは2匹、小さなクマは3匹で脱落という設定なのがまた心憎いところで。
スタート時には「まだ1匹もいないから余裕~」とか思っている気持ちなんですけど、そこからの「あと1匹で死ぬ!」みたいな感覚になると、すごいギャップを感じちゃうんですよね。人間ってチョロいな。
そしてガブガブされてから初めて気がつくんですよ。
「あのとき、おばあさんのいうことをもっと聞いていればよかったな」って。
大熊山のボードは初級、中級、上級で盤面が3つ用意されていて、たぶんみんな初級から始めると思うんですよね。
そんで、初級のときにはなんも思わないんですよ。余裕余裕って思う。
マスも少ないし、よほど自分から無理しなければ、ぱっと登ってぱっと降りてこれちゃうんです。
そういうときにはまだ、おばあさんの存在価値が見えてこない。やることないな、ばあさんヒマだな、って思いました。
クマよけに借りたイヌも、クマが出てこないんじゃ役立たずです。
初級をひとしきり回して、あそびかたもだいたいわかったところだし、ボードを中級に変えてみちゃう。
中級のボードは、見た目にはそんなに代わり映えしない。すこしマスが増えたくらいかな?と思います。
だからまあイヌもいらないんじゃない?高いし?とか思っちゃう。
ちなみにイヌは能力に応じて値段が変わるし、なんなら強い犬は初級1ラウンド分くらいのお金を要求してきます。だから初級のときは「たっけーな、借りるんじゃなかったな」とか思ってました。
ところが実際に中級の山に登ってみると…中腹にたどり着く頃には確率的に誰かがもう、クマに追われているわけです。それはもしかしたら自分かもしれない。
ああ、あのとき、イヌを借りていれば…なんて今更思っても手遅れ。
山男がクマと出会うたびに、おばあさんのテンションがあがっていきます。
自力での下山を諦めた山男たちが、商談にやってくるからです。
余裕ぶっこいてるときの山男たちは、おばあさんの言うことなんか聞いてくれませんが。
ビビり始めたらチョロいものです。
なるほどおばあさん役はこうやって利益を出していくんだな、と理解しました。
それにしてもこのサークルさんは、イラストに掛ける情熱がすごいのも好きですね!
イヌとかクマとか子グマとか山男とか、ゲーム的には価値が同じカードだから絵柄も同じでいいはずなんですけど、ちゃんとぜんぶ絵柄を変えてあるんですよ。
遊びながらだったからよくチェックできてないけど、山の幸カードの絵柄もすごくたくさんの種類がありました。
いちいちイラストを分けて用意するの、本当に大変だとは思うんですが。そういう作りによって遊ぶときの気分がぜんぜん違ってきますよね。
山の幸の相場観とかクマの脅威が身にしみるまで、交渉の目星をつけるのがわかりづらいとか。
どうしてもサイコロの出目とかカードの引きといった運の影響が大きいので、仕掛けが活きるとき活きないときの振り幅が大きいとか。
遊び方とは別の話になりますが、説明書がちょっとわかりづらかったな、とか。
欲を言えば気にはなるところがなくはなかったですけど。
でも、やりたいことやらせたいことがはっきりしていて、それをしっかり再現していることのほうが大事だと思いますし、私は好みです。
サイコロの幅が狭いから思惑や願いが伝わりやすいし、他人をハメようと思った罠に自分がハマったりするドラマがある。
あとは集めるのがお金で交渉もお金だから欲望もバレバレで、ストレートに盛り上がります。
穏やかすぎるパッケージのビジュアルから繰り出される、すごろくオブすごろくぽい雰囲気に対し、どうしても低めになってしまいがちな期待を余裕で超えて、ちゃんと遊べる上に大いに笑える作品でした!!
『大熊山 / OHKUMA-YAMA ~ The Big Bear Mountain』
2-4人用 / 8歳以上 / 約30-45分
Designer: STUDIO U×F
Publicher: STUDIO U×F (2018)
※インディーズ作品です。
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nakayoshi☺