ごきげんよう、なかよしです。
年間何作かのペースで、東京なかよしデザインという名前で作ったボードゲームを世に放っています。ゲームデザイン、グラフィックデザイン、ディレクション、プロデュースなどを担当しているいうことになります。えらそう!
今日は自作、『インフィニティミライボックス』とその箱なしアレンジ版『インフィニティミライ箱なしボックス』のアートワークの話をします。
【目次】
- インフィニティミライボックスについて
- ところでアートワークって?
- 共通の背景
- 背景の元ネタ
- 「箱あり」のコンポーネント
- 「箱なし」のコンポーネント:キャラクター部分
- 「箱なし」のコンポーネント:ロゴ部分
- あそびかたについて
- 東京なかよしデザイン出展告知!
インフィニティミライボックスについて
『インフィニティミライボックス』とは、東京なかよしデザインが2019年春に発表した妄想クイズゲームです。
中に2つの抽選箱が入っており、その中に手を入れて、指定されたお題をさも実際に触っているかのようにしてリアクションでヒントを出し、他の人に中身を当ててもらうという内容のボードゲームです。
未来人として未来から持ってきた不思議道具で考古学調査をするのが出題者、現代の知識で調査に協力する現代人が回答者という設定で遊びます。
『インフィニティミライ箱なしボックス』は、同じく東京なかよしデザインが2022年春に発表する想像体験クイズゲームです。
もちろんルールの調整は行っていますが大枠の遊び方は一緒、ただし抽選箱が付属しません。
もう完全に、頭の中の妄想だけでクイズに挑戦してもらおうという内容になっています。
便宜上この記事では、前者を「箱あり」、後者を「箱なし」と呼び分けることにします。
しっかりついてきてね!
ところでアートワークって?
アートワークとは、ある作品のイラストレーションとかグラフィックデザインとかDTPとか、あるいはビジュアルコンセプトみたいなものです。
見た目の印象だけでなく機能、ユーザーインターフェースに関わる話でもある。
まあでもたぶん、ボードゲームで一般的に「アートワークが良い」「アートワークが好き」みたいな言い方をするときは、その作品の「イラストが好き」「見た目的な雰囲気が良い」といった意味だと思います。
というわけでこれからボードゲームのルール部分ではなくて、絵とかグラフィックデザインに関わる裏話、メイキングの記録みたいなものをしていきます。
共通の背景
「箱あり」「箱なし」は世界観を共にするゲームです。アートワークでも共通の素材を使用しています。
イラストを施していない「箱あり」の方では、その素材がメインビジュアルを担っています。
背景にご注目ください。
平面の状態でお見せすることはあまりなかったと思うので、よくご覧いただきたい。
どんな印象を受けますか?
これを作っていたときは、パッケージにはっきりしたものを描いてしまうと、これから遊んでもらうゲームの内容に差し支えてしまうのではないか、という心配をしました。
そこで具体的なイラストは用意せずに、楽しくて明るくて、ポジティブなイメージを持てるような背景に、ゲームタイトルのみを添えてみようと考えました。
それが上の、ほぼ完成品の箱にあしらったような画像です。
ゲーム内容をイメージして、未来を感じさせつつ、シルエットが掴めそうな掴めなさそうな雰囲気を出したいという案で、カラフルなモザイクで表現することにしました。
タイトルの周りだけ解像度が段階的に上がっていくような表現も重ねています。
制作は3年くらい前のこと。
今見るとこういうふうにはしないかなあとは思いますが、まあやりたかった狙いは達成できているのかなと思います。
背景の元ネタ
ところでこちらが、背景画像を作るに当たってモザイク作業に使った元ネタです。
作業に当たった2018年末~2019年初頭当時の最新MCU映画、キャプテン・マーベルのポスターです。
なにか未来っぽいカラフルな物を!と考えて日々を過ごしていたところで見かけて、採用しました。
未来感ありますよね。好きな映画です。開始2秒で泣けたり、ユアン・マクレガーが情けなかったりするところが。
でももちろん、ポスターにただモザイクを掛けるだけではあまり好みになりませんでした。形や色味など様々な調整を施しつつも、元ネタがなんとなくわかるような仕上がりを目指しました。
まあ、いままで元ネタを指摘されたことはなかったですけれど。
今までそれなりに多くの人にパッケージを見てもらったことはあるはずなので、そもそもモザイク加工のモチーフだと思われていない可能性もありますね~。
「箱あり」のコンポーネント
ボードゲームの構成部品のことをコンポーネントといいます。箱の中身全般の内容物はすべてコンポーネントです。
箱ありの中身は、取扱説明書、得点ボード、得点ボード上で使うプレイヤーコマ、最大の特徴である2つの抽選箱が含まれます。その他にゲームで使うサイコロとカード、これは「箱なし」と共通のものになります。
組み立て式とはいえ黒い抽選箱が大きくてかさばるため、それをしまう外箱も大きくなっています。
この大きさのことは、作って家に届いてからめちゃくちゃ後悔しました。
1個なら想像通りぜんぜん問題ないですが、自宅に何十個も置くようなものではなかったです。
まだうちに在庫があるので、これをみた方も収納を手伝ってくれると切実に嬉しいよ!
そして制作にもっとも手間を掛けたのは、こちらのプレイヤーコマです。
これらは、カラーユニバーサルデザイン対応となっています。
カラーユニバーサルデザインというと、区別の付きやすい色味の選択が話題になりがちなのですよね。こちらの作品では、特製のスタンプをオーダーメイドして、模様で区別できるようにしてあります。
こうすることで、色が区別できなくても問題ないのでは、という挑戦です。
実際に役に立つ場面があったかどうかはわかりませんが、目的は達成しているはず。
実は本作に限らず、東京なかよしデザインのゲームはカラーユニバーサルデザイン対応してるんです。
まだ誰からも褒められたことないので、そういう配慮に気がついた方、日頃色弱向けプレイアビリティに一家言ある方、よさそうだったらぜひ褒めてくださいね!
「箱なし」のコンポーネント:キャラクター部分
箱なし版のコンポーネントを見てみましょう。
写真の通り中身はサイコロとカード、これに説明書がつくだけです。
シンプル!
特に新規制作の要素が強いのは、パッケージビジュアルだけということになりますね。
キャラクターのイラストを担当してくださったのは、ラブリー会という仙台の創作ボードゲームサークルの矢部さん。
イラストをお願いするのは今回で2回目です。
前回お願いしたのは『コフンクラベ』という前方後円墳をテーマにしたゲームのもの。
「学習まんがのような」と私は思っているのですけれど。
矢部さんはゲームマーケットでこの画風とみればひと目でわかるような、絵柄に個性がありますよね。
今作ではせっかく箱なし版を作り直すので、楽しげな雰囲気をより演出するために再びお願いして描いてもらいました。
箱の正面では未来人の少年少女が、謎に包まれたミライボックスを掲げています。
裏側には、同じキャラクターたちがこのゲームで楽しげに遊ぶ様子が描かれています。
期待以上の仕上がりになりました。とても満足しています!
「箱なし」のコンポーネント:ロゴ部分
東京なかよしデザインでは、あんまりロゴに手間を掛けないことが多かったです。
なかよしはめちゃくちゃロゴデザインなどながめるのが好きなのですが、そのぶん無限に時間を食いそうだから後回しにしがちだからという理由もありますし、凝って可読性が下がる(読みにくくなる)くらいならあんまり手を加えないほうがマシ、という考えでもあるからです。
そういった傾向からすると今回は、ある程度しっかりとフォントの組み合わせや配置などに時間を掛けてデザインを行いました。
特にこだわったのは配色です。
というのも、本作の制作期間である2022年初頭、意識の外にはどうしても置いていられないような出来事が2つ起こっているからです。
ひとつはトンガ王国の首都付近で起こった大噴火と、それに伴う津波の被害。
そしてもうひとつは、ロシア連邦によるウクライナ人民共和国への侵略です。
ロゴは、トンガ王国の国旗🇹🇴と、ウクライナの国旗🇺🇦をモチーフに彩色を施しました。
細かいことをいうと、「インフィニティ」の部分が黄色、「ミライ」の部分が青と最初デザインしましたが、入稿前に国旗通りの上下の配色に合わせました。
ロゴデザインに想いを込めるだけでなく、本作『インフィニティミライ箱なしボックス』の売上予定額の一部を予め赤十字の人道支援口座に寄付してあります。
通常こういった告知では、「売上の一部は寄付されます」という言い回しが普通かとお思いますが、トンガ王国への支援の締切がゲムマ前だったため、こういった書き方になっています。
ボードゲームで楽しく遊ぶにあたって、わざわざつらい出来事を想起させるようなことはしないほうがよい、と日頃は考えております。
ですので、これまでも同様のことは行ったかもしれませんし、これからも行うことはあるかもしれませんが、これまで公開することなかったです。
でも今回は、特にウクライナ情勢が、国際的な流通の恩恵にあやかっている製作者としての立場、様々な国の作品を味わい楽しむジャンルの趣味人としての在り方に、直接的に大きな影響を与えています。
現代を生きる日本人のひとりとして、まさにいま、迷い、立ちすくんでいます。
コロナ禍を過ごした2年間のあとの世界が、明るくなっていくどころかさらに不安で満ちた気すらしている。
そのような状況があったこともあり、制作はかなり難航しました。
伏せたまま前に進むのは思った以上にエネルギーを必要とするようです。
もしかしたら間に合わなくなるかもしれない。
せっかく創作活動をしているのだから、こうなったらもう伏せ続けるのはやめて、今の気持ちをそのまま形にしてみよう。記録しておこう。
本作のロゴ部分は、そういった経緯でデザインされました。
ここにわざわざデザイナーズノートを読みに来てくださっている方は、東京なかよしデザインのような、インディーズのボードゲームの創作活動にも少なからず関心を持ち、応援してくださっている方だと思います。
ありがとうございます。
この話が、広報として好ましい印象ばかりを与えるばかりではないかも知れませんが、私とあなたの様々な気持ちをすこしでも分かち合えるようなことがあれば、嬉しく思います。
ともに生き抜きましょう。
生きるからには、これからもなるべく楽しくやっていきましょう。
あそびかたについて
唐突にゲームの話に戻ります。
ここでは主に新作の箱なし版の話をさせてください。
最高のチラシを作ったのでこれを見て欲しい。
『インフィニティミライ箱なしボックス』は、ひとりが出題者になって、主にお題に触っている妄想をしてヒントを出し、他の人にお題を当ててもらうというゲームです。
工夫をすれば、リモートでも遊べます。色弱対応だけでなく、目が見えない方とも遊ぶことができます。
もちろんルールは調整されていますが、メインのクイズ部分は箱あり版と箱なし版で共通のコンセプトです。
箱あり版では、2人同時に同じお題を出題してもらうことでお互いのヒントのズレが面白かったり、実際に大きな抽選箱に手を突っ込めるので想像で触れることの臨場感が大きかったりといった違いがあります。
東京なかよしデザイン出展告知!
『インフィニティミライ箱なしボックス』は、4月23~24日に東京ビッグサイトで行われる「ゲームマーケット2022春」というイベントで発売します。
箱あり版も若干数持ち込みます。
さらに5月21~22日には、同じビッグサイトで行われるデザインフェスタvol.55にも出展予定です。
DESIGN FESTA | デザインフェスタ オフィシャルサイト
それぞれチェックして頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします!
イベントに来られない方には通販も用意があるので、ぜひご利用ください💪
わざわざ読みに来てくれてありがとう!
この記事を書いたのは、なかよし☺(東京なかよしデザイン)