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全作オススメ! 遊んで楽しかったボードゲームのことを、ボードゲーム作家が2人がかりで書き綴るご機嫌なブログです☺

お買い物してパズルを解いたら、完成した絵を愛でようよ『キャンバス / Canvas』【100点】

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これはなんだ?

油絵?

箱?

タイトルも何も書いていないこの素敵なイラストがあしらわれているパッケージの中身はなんと、ボードゲームです!

というわけでいま話題の新作ゲーム『キャンバス』を遊ぶ機会がありましたので、何回か遊んだ感想を書きます。

 

目次

 

どんなゲーム?

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画家になって、美術展に出品する絵を描きます。

全員が3枚仕上げたら、評価の合計が最も多いひとがゲームに勝ちます。

 

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初めに持っているのは、背景カードが3枚と、4つのパレットトークン。

このパレットトークンにもちいさく絵の具が載ってて、いちいちかわいい。

背景カードは付属のスリーブ(袋状のカバー)に入れてあります。

 

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手番にやれることは2つ。

ひとつは、芸術カードを手に入れること。

透明な芸術カードには1枚ずつ別のイラストが描かれていて、場に5枚公開されています。

一番左は無料でもらえますが、より右のものを選ぶためには、パレットトークンを支払う必要があります。自分の選んだ芸術カードに支払われたパレットトークンが載っていたら、トークンごと受け取れます。

 

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そんなこんなで必要な数の芸術カードが集まったら、いよいよ絵を描きます。

というわけで、手番にできることの2つめは、絵を完成させることです!

 

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絵を完成させるために、手元に集めた透明カードから3枚を選んで、背景カードに重ねます。

 

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背景カードは大きめのスリーブに入っているので、そこに透明カードを束ねて差し込めばできあがり!

なんと完成した絵にはタイトルまでつきます。

というわけで記念すべき第一作「堕落した食事」の完成です!

題名までつけてくれるのめちゃくちゃ楽しいね。

 

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完成した絵は、さっそく美術展で評価してもらいます。

評価するポイントを決める得点カードは、ゲームごとに4つずつ採用されています。

遊ぶたびに入れ替えられるので、遊ぶたびにちがった観点を求められますね。

今回のゲームで、ひとつめの赤の賞は「△のペア」でした。

完成した絵の下にアイコンが並んでいるのがわかるでしょうか。これを得点カードごとにチェックします。

△が2つ。つまりペアがひとつあるので、赤の賞をひとつ受け取ります。

 

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実はイラストの出来や題名は点数には関係ないのです!

アイコンしか見ないので、背景カードも実はどうでもよい。なぜなら背景カードにはアイコンがひとつもないからです。

ということは、背景は絵の中で唯一、点数に関わらない自由に選べる部分。絵を完成させるなら、なるべくお気に入りの仕上がりを目指しましょう。

背景カードが違うと絵の雰囲気も随分変わってきますね~。

 

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ゲーム終了までに各プレイヤーは3枚絵を完成させます。

みんなが3枚の絵を描き終えたら、ゲーム終わり。

何色の賞を合計何個ずつ受け取っていたかによって、得点が変わります。

 

もちろん、合計得点がもっとも高い人が勝ち!

 

たのしいね、遊んだ感想!

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とにかくかわいい!

このボードゲームを手にとったときの期待が、実際に遊べば完全に満たされます。

 

ゲーム自体は、シンプルなお買い物パズルです。

単純に勝つことだけを考えるなら、絵柄は関係ないので。示されたアイコンの組み合わせの効率的な得点化だけを気にすればよろしい。

でも絵柄やタイトルの組み合わせを気にしないわけにはいかないような、魅力に溢れているのはこのゲームならではの体験です。

まあ私は好きな絵に仕上げることにこだわるより、できあがった偶然を楽しむタイプのプレイヤーですけど。

得点を優先して変な絵ができあがると、不思議となんだか悔しいものですね。

評価されて得点を得てゲームに勝つことと、素敵な絵ができあがっているかどうかは別、というところ。妙にリアルに感じられて味わい深いです。

 

パズルゲームの感想でよく聞く、個別にソロゲームをさせられているような印象はほとんどありませんでした。

市場の変化やトークンの増減の影響をダイレクトに受けるので、ゴリゴリにインタラクション(プレイヤー同士の駆け引きや相互作用)を感じられます。

それでいて、足の引っ張りあいや意地悪とは感じにくくなっている。

このあたり、5枚しか手札を持てない制限がよく効いています。

他の人の手札をみて邪魔をしてやろうみたいなことをすると、自分の手が塞がるので得が少ないのです。

得点条件は共有しているので、欲しいカードが偏ることはありますが、早いものがちで奪われるのはお互い様ですからね。

足の引っ張り合いが楽しいゲームもありますが、このビジュアルのゲームでそれを期待して遊ぶ人は少ないでしょうから、大事な味付けだと思います。

 

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60種類もカードが有るから、組み合わせが膨大。絵ができあがる過程は何回やっても、しあがりが楽しみですね。

そういえば、2人プレイでも市場がまったく停滞しないことに驚きました。

こういった「共有の場からのお買い物」的な要素のあるゲームを、少なめの人数で遊ぶ場合、市場が停滞して、誰も欲しくないカードがずっと場に残りつづける。というような、ネガティブな状況が起こりがちです。

今回は2人で遊ぶこともあり、ルールでカバーもされていなさそうなので遊ぶ前にはすこし警戒していたのですが。

遊んでみると市場はよく回り、閉塞感みたいなものはまったくありませんでした。

お買い物がメインアクションであることと、手持ちのパレットトークンが貴重なため、とりあえず無料のカードに溜まったトークンを回収しておきたい手番が頻繁にあるからです。

 

新しいカードが場に出てくるガチャ要素にも、毎手番ささやかなドキドキを味わえます。

パズルの組み合わせを考えるのが楽しく、できあがりを見くらべて味わえて、適度にインタラクションがあり、運の要素もある。

プレイ人数が変化しても、こういった良い印象が変わりにくい優秀なボードゲームだといえるでしょう。

 

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ついついカードの絵のことばかりに目が言ってしまいますが、他のコンポーネントもすごいです。

まず箱ですよね。

タイトル書かない作品はまれに見かけますが、今作ほどタイトルがないことについてデザインの意図に沿った表現もなかなかないのではないでしょうか。

好きです、コンセプチュアル。

箱の底には穴が開いていて、なんとそのまま壁掛けにして飾ることもできるのです。

そしてそして、布!

キャンバスマットと呼ばれるこれは、カード置き場になっています。

よくあるゲームボードはプリントされた厚紙製ですが、これは布製で、箱の中に巻物として収まっています。

ゲームの雰囲気が盛り上がりますね。

それだけでなく、透明な芸術カードを、どんなテーブルで遊ぶときにも絵柄を確認しやすい状態にする現実的な機能もある。

いやーすごいな!

 

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ゲーム部分とコンセプトの関わりについても、もうすこし掘り下げましょう。

アイコンの組み合わせを、4つある得点カードのうちいくつを何回満たせそうか?

このゲームは、そういうふうに考えて、目指しながらお買い物して、答えを作って解くパズルです。

勝敗の行方を大きく左右するのは、得点カード。

 

この得点カードは全部で12枚ありますが、ゲームではそのうち4枚だけ並べます。

これは毎ゲーム異なる目的を与えることによって、何度遊んでも新鮮に楽しめそうだ!というゲームをリプレイ性を提供しているように見えます。

 

でもでも、ちょっと冷静になってみましょう。

得点カードが組変わったところで、パズルの味がそんなに変わるでしょうか。

だってお買い物をして、最大5枚の中から3枚を選ぶっていう手段は同じままだから。

そんなに何度も新鮮に味わえるとは言いにくい気がしちゃいます。

じゃあ何が変わるのだろう?

得点カードが変われば、完成する絵のアイコンの組み合わせも変わります。アイコンにはそれぞれ別のイラストとセットになっています。

つまり、得点カードによって変わるのは、出来上がる絵の組み合わせなのでは!

得点カードのセッティングが変わることで、毎ゲームできあがる絵が大きく変わる仕組みになっているのです。

このゲームならではの意図されたリプレイ性ですよね…ここでもちょっと感動しちゃいました。

 

というわけで。

得点カードは、説明書的にはランダムに並べることになっていますが。

目指せる得点が幅広くなるように。

絵柄が前回のプレイと似通った感じにならないように。

準備の段階ですこし気にして、自分たちで選んで入れ替えるのをおすすめしたいです。

アイコンや色など、参照するものをバラけさせたほうが遊びやすいとも思います。

 

まとめ

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キャンバス、本当によくできています。

お買い物パズルは、ゲーム慣れしていない人にも伝えやすいルールで、ジレンマを演出しつつも遊びやすさを提供しています。

可能性は無限と思えるもののものの、場の状況や手札の制限などが寄与して、手元では複雑になりにくい。

とはいえ商品としては、ゲームの勝敗とは関係のないビジュアル的な要素が魅力のメインでしょう。

「どんな絵ができあがるのか楽しみ! 一緒に遊ぶみんなで味わえそう!」

そんな期待に違わず、丁度いいゲームを添えて、完成後の鑑賞を通じて遊びながらのナラティブな部分もしっかり担保しています。

所有する喜びに溢れたコンポーネントを備えた、とてもとても完成度の高い優秀なプロダクトだと思いました。

 

不満というか、贅沢をいうなら、山札の量ですかね。

2人ゲームを2回遊ぶと、山札がだいたい一周するくらいの規模感なんですよ。

なので4人で遊ぶと、1回のゲームで山札をちょうど使い切るくらいではないでしょうか。

芸術カードや背景カードはあればあるほど楽しいゲームなので、早く拡張が出てほしいと思いましたね。

いますぐ足して遊びたい!!

ディクシットみたいに拡張が無限に発売されてほしいです。

 

 

『キャンバス / Canvas』
1-5人用 / 約30分 / 14歳以上
Designer: Jeff Chin, Andrew Nerger
Artist: Luan Huynh
Publicher: エンゲームズ (日本語版 2021)

Canvas | Board Game | BoardGameGeek

 

 

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この記事を書いたのは、なかよし☺(東京なかよしデザイン)

 

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